海洋深層水の利用1

新たな発展

2016年11月に開催された、第1回韓国海洋深層水利用学会 国際フォーラムで中島敏光先生が講演された内容を提供して頂きました。海洋深層水のパイオニアが語る海洋深層水の経緯と未来とは。。。
(パワーポイントデータをそのまま画像にて掲載させて頂きました)
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中島敏光先生

元:日本 国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)sIMG_1618
  海洋深層水プロジェクト研究チームリーダー
  韓国 京東大学 海洋深層水学科 教授/海洋深層水研究所 所長
著書:海洋深層水の利用―21世紀の循環型資源

はじめに

今から50年前、海洋深層水の利用(Deep Ocean Water Applications:DOWA、本講演ではDOWAと略称)が注目されました。水産分野から始まったDOWAは淡水生産、エネルギー生産(水温制御、地温制御及び冷房等)などの分野に広がりました。現在では飲料水、化粧品、食品など海洋深層水を使用する多様な商品が開発され、海洋深層水ビジネスが誕生しています。そして地域の経済活性化や教育文化などの地域振興にも貢献しています。
本講演では、実用化のためにどのような研究が行われたのか?そしてどのようにして海洋深層水産業が誕生し、全国に波及したのか?について紹介します。また、これからの新たな発展に向けての課題についても触れたいと思います。
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1.DOWA研究のはじまり

まず、海洋深層水利用研究のはじまりについて紹介します。

1967年、科学雑誌Scienceに米国Columbia大学の二人の若手研究者がDOWAについて発表しました(図1)。そして、1972年、彼らの研究室のOswald A. Roels教授(写真1)は彼らのアイデアを発展させ、水深870mから日量360トンの低水温で栄養塩に富む清浄な海洋深層水の取水に成功しました。場所は、熱帯海域カリブ海のバージン諸島にあるセントクロイ島(St. Croix)です(図2)。
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これは熱帯の貧栄養海域で栽培漁業(Mariculture)を可能にするという点で画期的な出来事でした。また、海洋深層水オンライン供給での利用法を開発し、多段利用を示唆した最初の研究と言えます。海洋深層水の流水系で、最適な栄養塩供給速度による植物プランクトンの連続培養を行い、連続給餌によるアサリやハマグリ等の二枚貝の養殖を可能にしました(図3)。DOWA研究の始まりと言う事ができます。しかし、当研究の成果は1980年以降には途絶え、研究は実用化に至りませんでした。
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2.海洋科学技術センター(JAMSTEC)による基礎研究の開始

1976年、海洋科学技術センター(JAMSTEC)/科学技術庁(現在は国立研究開発法人 海洋研究開発機構/文部科学省)はDOWA技術の体系化に向けた基礎研究を開始しました。
海洋深層水の水質調査、自然湧昇海域の調査(図4)、植物プランクトンの基礎生産実験(写真2)などを通して、海洋深層水の資源性(表1)やその分布(図5)、そして資源として海洋深層水が定義づけられました。そして、我が国周辺の取水適地(図6)や取水工法(図7)などが検討されました。
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sスライド12これらの研究成果を踏まえて1984年にDOWA技術が概念化(図8)され、1985年にJAMSTECは「DOWA実証研究」を国(科学技術庁)に申請しました。


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